マルチタスク学習に向けた高品質データセット構築に関する研究

本研究では,マルチタスク学習と呼ばれる方法で機械学習の精度向上に必要なデータセットの構築を行う.マルチタスク学習では,二つ以上の問題をまとめて解くことによって精度が向上することが知られているが,どのような問題を組み合わせると精度が向上するかは自明ではない.そこで,相性の良い問題,悪い問題の傾向について明らかにすると共に,データセットの構築を行うことがこの研究の目的である.クラウドソーシングによりデータセットを構築することにより,安価で高精度なデータセット構築が可能となる.評判分析を一つのテストケースとして用い,既存手法で60%程度の精度であったものを80%程度まで向上させることを目指す.

本研究は科学研究費補助金 基盤研究(B) 24K03044 によるものです.

生成AIによる工程自動生成システムの構築

金型製造の工程設計は多品種少量生産が多く、指示書内容ごとに工程が異なるため熟練者の経験や勘に頼ってきた。しかし、熟練者不足や後継者問題が深刻化する中、人手による工程作成は手間がかかり、生産性を低下させる要因である。一方で我々は既に大量の指示書データと作業工程データを電子化し蓄積しており、デジタライゼーションが完了している段階である。この強みを活かし、蓄積されたデータを用いた生成AIによる工程自動生成システムを構築することで、熟練者の暗黙知を人工知能化し、生産性の向上と知識伝承の課題解決をデジタルトランスフォーメーションによる実現を目指す。

本研究は岐阜県DX推進コンソーシアム ワーキンググループ事業費補助金により(株)黒田製作所および(株)ピュアシステム,(有)希光モールドと共同で実施するものです.

クラウドソーシングにおける協調動作による大規模創造的作業に関する研究

本研究ではクラウドソーシングにおいて創造的な作業を大規模に行う際など,協調的作業において高品質な作業結果を得るための作業環境を構築することを目的とする.この作業環境は,制作物の正解を事前に定めることができない状況で利用可能である点,低品質な作業者を再教育する点が特徴である.例えば,短編創作小説を多人数の作業者で協調して作成することを考える.このとき,まず作業者の客観的および主観的な特徴を機械学習アルゴリズムに入力し,作業者の品質を推定する.また,この結果から他の作業者により作業結果の品質を向上させる方法を示す.

本研究は科学研究費補助金 基盤研究(B) 19H04218によるものです.

レジリエントな社会実現のための大規模オープンデータ流通プラットフォームの構築

本研究では,ディープニューラルネットワーク(DNN,ディープラーニングとも呼ばれる)を組み合わせることによって,誹謗中傷メッセージを収集,フィルタリングを行う方法についての研究を行う.本研究の特徴は,メッセージ収集の網羅性の高さを目標としていることである.一般的なメッセージフィルタではキーワードによるフィルタを行っているが,抽象的な表現や皮肉を含む表現など誹謗中傷に関するキーワードを含まない誹謗中傷メッセージについては,抽出することができないという問題点がある.本研究ではこれを解決するために,ディープニューラルネットワークのうち最も性能が高いモデルである BERT を用いる.

BERT による高性能な分類器には,大量の高品質な教師データが必要となる.教師データである誹謗中傷メッセージ,誹謗中傷ではないメッセージを大量に,高い精度で収集する必要がある.特に,本研究の目標である網羅性の高い誹謗中傷メッセージ収集を行うためには,誹謗中傷の全てを網羅するような巨大なデータセットを構築する必要がある.そこで,データセット構築のためにクラウドソーシングプラットフォームの開発を行う.

本研究は,越山科学技術振興財団の研究助成によるものです.

災害時における状況を考慮したユーザセントリックな行動促進情報基盤

災害時,SNSには災害に関する様々な情報が投稿されるが,その中には被災者にとって有益な情報もあればそうでない情報もある.また,これら情報の中には閲覧者(以下,ユーザ)に行動を促進している情報(以下,行動促進情報)が多数有る.災害時のユーザにとって有益な行動促進情報はそのユーザの置かれている状況(時間,場所,感情)によって異なってくる.そこで,本研究では災害時にユーザが,SNSから自身の状況(時間,場所,感情)に適した有益な行動促進情報を容易に取得できる手法の確立を目的とする.これにより,災害時にユーザは自分の状況に合った有益な行動促進情報を容易に取得し,行動することが可能になる.

本研究は科学研究費補助金 基盤研究(B) 19H04221によるものです.甲南大学 灘本研究室と共同研究を行っています.

異種データセット間におけるエンティティ同定とその活用に関する研究

異種データセットを有機的に繋げ合うことで,カバー範囲の異なる知識を結び付け,その利活用の簡素化を可能にする仕組みとその運用方法について研究開発を行う.この仕組みの実現には,データセット内の概念単位を正確に捉える技術と,異種データセットで個別に扱われている概念の関係性を判別する技術の確立が課題である.これら二つの技術をまず一分野で確立するため,この技術によりデータ活用範囲の拡大が期待できる食メディアを題材として研究を行う.

本研究は科学研究費補助金 基盤研究(B) 23K28383によるものです.同志社大学 波多野研究室と共同研究を行っています.

災害時におけるソーシャルメディア情報フィルタリングシステムの開発

本研究では,災害時に信頼度が高い情報を漏れなく高速に取得するために,ソーシャルメディアを対象とした情報フィルタリングシステムを構築する.我が国では近年大災害が頻発しており,救援物資を必要な量,必要な場所へ搬送するためには,被災地域に関する情報を漏れなく高速に把握する必要がある.Twitterなどのソーシャルメディアでは,このような災害時にも有用な情報が流通し,被災地域の救援に役立っている.ところが,必要な救援情報が伝わらず,必要な物資が得られないという被害も発生している.キーワードなどによる簡易なフィルタリングを適用すると,必要な情報が見落とされてしまう.なぜなら,必要な情報に必ず含まれるキーワードを発見することは難しいためである.そこで,ソーシャルメディアにおいて必要な情報を漏れなく,高速に抽出できる高性能な情報フィルタが必要である.  そこで本研究では,機械学習と人手による判定を組み合わせる方法により,高性能なソーシャルメディア情報フィルタリングシステムを構築する.できるだけ必要な情報を漏れなく収集すること(再現率),災害が起きてすぐに必要な情報を得られること(瞬発性)を評価指標とし,この二つの指標の向上を目指す.この目的のため,機械学習(強化学習)と人手(クラウドソーシング)を組み合わせたフィルタを構築する.まず,ソーシャルメディアから得られた情報をfastTextにより分散表現に変換し, SVMにより情報を分類,必要な情報かどうかを仮判定する.そして,この仮判定結果を人手により再度判定する.機械学習による仮判定と人手による判定を通過した情報だけを,必要な情報として活用する.この一方で,人手による判定を機械学習の教師データとして再度利用し,SVMの分類精度を向上させる.さらに,機械学習の判定結果を人に提示することによって,人手による判定精度を向上させる.最初は人手による作業を主とした情報フィルタであるが,学習データの増加と共にだんだん機械学習の精度が向上することから人手による作業部分を減少させる.最終的には機械学習だけで高精度なフィルタリングを行うことが可能となる.

本研究は, 公益財団法人大川情報通信基金2019年度研究助成によるものです.